三春の陶芸家 渡辺安里さん - 郡青ひなたweb
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自分だけの作品を追求
「陶芸は何よりもおもしろい」

渡辺安里(あんり)さん

さくら湖に近い小高い丘の上に、廃校となった校舎がある。旧・中郷(なかさと)小学校狐田(きつねだ)分校だ。この場所に生活の拠点を構え、作陶を続けている作家がいる。作品への並々ならぬ情熱と、地元・三春への想いを伺った。

取材ご協力:渡辺安里さん、わたなべあずささん

田村郡三春町狐田字深谷93-1
TEL 0247-62-0087
作品や陶芸教室へのお問い合わせは、上記電話か手紙で。
※4月の第1土曜日から4月末日までは、「かえるさんの家」で作品展示中です。期間中はそちらへお問い合わせを。(TEL 0247-62-1131)

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真剣な眼差しで制作に取り組む渡辺安里さん。
学校であった当時と大きな変化はなく、ほぼ原形のまま使用している。
元々は教室であった制作部屋。
音楽室は窯場として使用。

 渡辺安里さんは三春の町中で生まれ、父親の仕事の都合で高校までを福島市で過ごした。武蔵野美術短期大学工芸デザイン専攻を卒業後、兵庫県の滴翠(てきすい)美術館付属陶芸研究所で腕を磨く。1988年より同県美のう郡で作陶を始め、関西を中心に作品発表や陶芸教室で指導に当たってきた。三春へ帰郷したのは2001年のこと。渡辺さんにとって、やはりこの町は特別なものであったようだ。

「田舎らしい広い家で、じっくりと作陶に当たれる場所を」

 渡辺さんが帰郷にあたってまず考えたのは制作環境のことだった。少女期の多くを福島市で過ごしたとはいえ、父親の実家がある三春には、ことあるごとに遊びに来ていた。昔ながらの家々が残る町並みや、桜川が流れる風景が何よりも好きだったという。そんな原風景があるからか、綺麗な新しい家よりも、趣ある古い家での作陶を考えていた。
 狐田分校が廃校になったのは1991年のこと。渡辺さんの帰郷よりも10年程前のことだが、様々な偶然が重なり、この場所を使えることとなった。「ここを借りられたことが、三春へ戻る大きな理由になりました」と渡辺さん。大きな改修をすることもなく使っているのは、学校独特の雰囲気や環境が気に入っているからだ。教室が3つと職員室、プレハブの音楽室という構造は、作陶を行うには理想の広さだった。しっかりとした造りの音楽室は窯場に向いているなど、意外な利点もあった。
 絵を描く妹のあずささんと共にこの場所を使うようになって10年余り。現在は自身の制作の他にも陶芸教室を主宰するなど、精力的に活動している。

「作品には生き様が出る。だからこそ、きちんとしたものを作りたい」

 渡辺さんの作品の特徴は、「徹底したオリジナリティの追求」にある。学生時代から様々な作品に触れ、試行錯誤を繰り返してきた。「伝統の技法を踏襲するよりも、個人作家として自分らしい表現方法を見つけたかった」と渡辺さん。見ただけで渡辺さんの作品だと分かるような、いわば「渡辺安里ブランド」とでも言おうか、自分独自の作風を目指してきた。
 方向性が固まってきたのは30歳の頃。三角の印花(いんか)(注1)を押し、へこみに白い泥を埋めていく現在のスタイルに終着していった。花瓶等の小物も作るが、より作風が生きてくるのは花器など大きな作品だ。見せていただいた花器(トップ写真)は、見る者に作者の情熱を伝えてくるような強い力が感じられる。
 渡辺さんの作品作りへのこだわりは多い。陶芸は分業するところもあるが、渡辺さんはろくろを引くのも、絵付けをするのも、窯を焚くのも基本的に一人だ。その分、細部まで様々なこだわりが表現できる。
「焼き物は技術を身につければ全て一人でできる。自分の表現したいものが作れるから、数ある芸術の中でも一番楽しいと思う」と渡辺さん。何よりも自分自身が焼き物の魅力にはまり込み、楽しみながら仕事を行なっているのだ。
 それでも、まだ完璧な作品はできていないと言う。「きっと一生100パーセントの作品は作れない気がします。でも、何百年もの間後世に残るものだから、いつかは認められるものを作りたい」 
 受け入れられようとか、売れる作品を作ろうという気持ちは強くない。その代わり、作品自体の質の向上に勤しむことで、本当に自分らしい作品、良い作品とは何かを常に研鑽し考えている。苦労される面も多いとは言うが、制作に妥協はない。それは「作品にはその人の生き様が出ると思う」から。だからこそ、「きちんとしたものを作ることが陶芸家としての責任」と渡辺さんは語るのだ。

注1:判子のようなもの。

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