水引細工三春の郷土文化と出逢う

水引を使った伝統技術「水引細工」

取材:2010年5月
取材ご協力:小笠原流派玉増流(おがさわらりゅう ぎょくそうさい) 鈴木節子さん
文 、写真:木村裕輔
(掲載の情報は取材時のものです。情報が古い場合や、お気づきの点がございましたらご連絡ください。メールはこちら)

歴史的記述についての考え方はこちら

古くから伝わる日本の伝統・水引を使い、日常の生活で使える様々なものを制作。
三春の地から、全国へ魅力を発信していく。

古くから進物に使用

水引(みずひき)というものをご存じだろうか。結婚式や正月飾りで目にする、紅白、金銀などの細いひも状のものである。
紙を細く割いて寄り合わせ、ひも状にしたものを「紙縒(こより)」という。それに糊水を引き、乾かし固めて作る。一般的に慶事には紅白・金銀等が、弔事には白・藍・黒等の色が用いられる。
この歴史は古く、6~7世紀に隋よりもたらされたと言われている。当時は麻糸が使用されていたが、徐々に紙縒へと変化していった。室町時代には進物に水引をかけて結ぶことが最も礼にかなった作法であるとされ、現在の結びの多くがこの時代に考案された。また、江戸時代以降には装飾化が強まり、用途が広がって水引細工が始められたとされている。

慶弔時だけのものにしない

現在も慶弔事には欠かせない水引細工だが、その魅力を広げていこうと、様々な作品を制作しているのが、三春町に住む鈴木節子さんだ。
鈴木さんは熨斗(のし)屋を営む家に生まれ、幼い頃から家業を手伝いながら育った。小笠原流派玉増流(おがさわらりゅう ぎょくそうさい)創始者である父のもとで技術を磨き、ご両親が亡くなった後は後継者として、水引細工の魅力を伝えてきた。
「水引細工というと、どうしても結婚式やお正月だけのものという印象がありますが、それだけではもったいないと思いました。水引でこんなものも作れる、こんな魅力もあるのだと、多くの人に伝えていければと思っています」と鈴木さん。
鶴や亀などの定番のものはもちろん、髪飾りやブローチ、携帯ストラップなど日常で使える小物でいっぱいだ。また、芸術的な造花や生け花への応用など、鈴木さんの作品世界は実に幅広い。水引の技術を、現代に馴染むようにアレンジしてきた。
「福島県文化センターへの出展や、新聞に取り上げていただいたことで、最近は興味を持ってくださる方も多いんですよ。特に若い女性にはかわいいと人気なんです」
水引の色は多様化し、日常使うものには明るい色が選ばれる。キラキラと輝く小物を見ていると、なるほど女性の心を掴みそうだと感じられる。
ただ、鈴木さんは商売として水引細工を行っているわけではないので、制作した作品の販売は行っていない。普段は自宅に生徒を集め指導している他、問い合わせに応じて随時講習会を開く形だ。他県から観光バスで団体が受講に来たこともあるというのだから、その人気ぶりが窺える。
「あわじ結びという基本形をマスターできれば、いろいろな作品が作れますよ。ただ、マスターするには半日はかかりますし、繰り返さないと忘れてしまいます」
制作は完全に手作業。基本的には指先一つで行う。鈴木さんはいとも簡単に結んで見せるが、すぐに習得できるようなものではない。そのため、短期の講習会ではあらかじめ難しいところを作ってから出向くなど、誰にでも楽しめる配慮を欠かさない。
「水引細工が、より多くの人の目に留まり、喜んでいただけるようになることが一番です。父が残してくれた宝物を、絶やさないように続けていきます」
鈴木さんにとっての宝物が多くの人へ伝わり、波及していく。水引を通じた人と人との輪は、作品のように徐々に結ばれていくことだろう。

※鈴木さんへのお問い合わせは個人宅のため、弊誌編集部までメールにてご連絡ください 。こちらから鈴木さんへ確認いたします。

取材、文:木村裕輔

水引細工
一般的な水引細工の例。昔から慶事には欠かせない。

水引細工
あわじ結びの基礎マスターに。これだけで、ちょっとした小物が完成する。

水引細工
水引細工で作られた孔雀。キラキラとした美しい水引を使用している。

line

他の三春町特集

※当ページのコピー(コピー&ペースト)は禁止させていただいております。詳しくは「著作権についての考え方」をご覧ください。