水源地

 

このページでは、郡山盆地地帯を潤している『安積疏水』を取材していた時に出会った、「水源のある山」を紹介いたします。

 

安積疏水(あさかそすい)とは

福島県郡山市は、阿武隈高地と奥羽山脈の間に位置する「中通り地方」に位置する都市です。現在は30万人以上の人口を誇る中核市ですが、明治時代の安積(あさか)原野(現在の郡山盆地一帯)は荒涼としていて水源が乏しく、太古以来荒野のまま放置されていたと言われています。

この安積原野の開拓を進めるべく、当時、明治政府の中心人物であった大久保利通に働きかけ、猪苗代湖より灌漑用水として引かれた「水」の水路が安積疏水です。

今では、水道用水・工業用水・発電用水・都市生活用水など多目的に活用され、水路全体の長さは実に366Kmにも及んでいます。まさに郡山盆地全体を潤している「命の源の水路」と言えるでしょう。明治12年から工事が始まり、同15年に完成、さらに昭和時代には新安積疏水も開通しました。郡山盆地に水の安定した供給を続け、 平成24年には通水130周年を迎えました。

安積疏水

安積疏水。郡山市熱海町にて。

 

水源のある山との出逢い

この安積疎水に水を送っているのが、中通り地方と会津地方の間の高地に位置する猪苗代湖です。

いったいこの湖に蓄えられる水源はどのようになっているのだろう――そんな疑問から、今回の調査取材を始めました。その際、山の所有者との偶然の出会いから、今回ご紹介する「水源のある山」を知ることとなり、案内していただきました。

入り口 入り口付近

山の入口は、国道459号に面しており、道路に接続している進入口は、幅員12メートルの造成工事(24条許可)が完了しているようです。

あ 平らな林

山の林道を100メートルぐらい上ると、小川のせせらぎの音が聞こえ広く平らな林が広がります。その林を右手に見ながら、綺麗な水の流れる小川沿いに緩やかな林道を上っていきます。

急坂

少し坂が急になったら、しばらくで道なりに右に折れます。そこからは急坂となり、登りきったところに「水神様」が祀られていました。

水神様 水源

その水神様のある場所こそが「水源」となっています。なお、この水源より山の上の方は国有林になっており、今のところ人が踏み入ることができない状態だそうです。

 

水源地の特徴

この水源からは、古来より、一日200トンもの水が湧き出しており、東日本大震災の後も水源の状態は全く変化がなかったということです。山の下の長坂という地区からは「長坂遺跡」が発掘されていることから、古代よりこの水が使われていたのではないかと考えられています。この水は、古代から今現在に至るまで脈々と湧き出し続け、それはきっとこの先未来も変わることはないでしょう。

見せていただいた水質検査表の記載によると、この水は、硬度14、常温9度の超軟水で、原水の状態でも水道法の水質基準に飲料水として適合しているようです。私も飲んでみましたが、とても美味しい水でした。

これだけの水をこのままにしておいては、何だかもったいない気がしてなりません。

水利権もここだけ(約3万5千坪の土地)の物で、他には影響をおよばさないのだそうです。

水源地

 

これからの展望は

地主さんに聞くところによると、水の有効活用は何度も模索してきたそうですが、結局自分達だけではどうにもならないと言います。

自治体にも相談してみたそうですが、設備資金等諸々の予算がないため、現状では協力が得られていないそうです。もっとも、企業が来てくれることで町の雇用が創出されるようであれば、全面的に協力は惜しまないとのことです。

このような「天然自然伏流水」を守り、有効、有意義に使い、自然界と共生・共存・共栄しながら、未来に繋げていくことは、地球全体にとっても、日本国にとっても、とても大切なことのような気がします。

と言うのも、飲料水を巡る問題は、これからとても大きなものになってくると思うからです。

地球は、「水の惑星」と言われているとおり、地球表面の約71パーセントを海が占めています。この膨大な水の存在が、人間を含む生物の生存を支えているのです。しかし、私達人間が利用できる水は、決して多くはありません。地球上の水の97.5パーセントは海水(塩水)で飲めない水、飲料に適した淡水はわずか2.5パーセントしかありません。しかもそのうちの3分の2は、極地の氷河や深層地下水として貯蔵されているもので、私達が利用できる水は、わずか1パーセントにも満たないと言われています。 (日本陸水学会編著「陸水の事典」講談社より)

今、地球上で飲料水を必要としている人類は、70億人以上いると言われています。他にも淡水を必要としている動物・植物等の生物が多々存在します。

このような状況の中で、今後、地球上の人類の20億人から30億人の人々が深刻な飲料水不足にさらされる状況になると考えられています。

日本国内だけに目を向けてみても、今後駿河湾沖や東京湾を震源とした都心部への大地震、富士山の噴火等、様々な自然災害が危惧されている状態です。今後もし東日本大震災規模、あるいはそれ以上の規模の有事が起きた場合、飲料水の不足は危機的な局面を迎えるのではないでしょうか。

飲料水となるような「天然自然伏流水」は、あるところには沢山ありますが、ないところにはまるでありません。偏在する水を平等に分配する事は難しく、なかなかできるものではありません。

ですが、安積疏水のように、農業用水をはじめ、生活用水、工業用水、発電用水と多目的に見事に活用している事例もあります。郡山盆地では、猪苗代湖の水がなくなる、あるいは安積疏水が自然災害や地震等で破壊されない限り、水の心配はないのかもしれません。

今回ご紹介した天然伏流水も、何か有効な活用方を考える余地があるのではないでしょうか。 有事が起こる前から、少しでも多く新鮮な自然天然水を飲料水として供給出来る状態の場所があれば、それに越したことはないでしょう。良い知恵が有りましたら、どうぞ御教授下さい。

 

 

執筆:kuma-ks

1945年千葉県生まれ。福島県の水の魅力に惹かれ、2010年に夫婦で移住。福島県の電子書籍「郡青ひなた」の嘱託取材記者。

 

※この記事は、kuma-ksさんからの寄稿を、編集部にてホームページ用にリライトし、kuma-ksさんのページとして「郡青ひなたweb」内に掲載したものです。

 

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なお、山を守るため、現在この山の立ち入りは禁止となっているとのことです。見学等の場合もお問い合わせください。

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