特集 熱海町

郡山駅から磐越西線でわずか三駅。磐梯熱海駅に降り立つと、雪をかぶった山の風景と、静かに佇む温泉街の情緒溢れる雰囲気に包まれた。
ここ熱海町は郡山市北西部に位置し、五百川の流れと三方を山に囲まれた自然豊かな町だ。西側の中山峠を越えれば耶麻郡猪苗代町。中通りと会津の境という山深い地にありながら「熱海」という名前が付されたのは、源頼朝の奥州征伐後、安積を支配することとなった伊東氏が、故郷の伊豆を偲んで名付けたためとされている。
鎌倉時代に発見されて以来およそ八百年の歴史を誇る温泉は、五百川の流れの美しさと共に町の表情をつくり出してきた。どことなく優しい雰囲気が漂うのは、きっとこの地にたくさんの人々が癒しや「和」を求めてきたからだろう。

今回の取材は12月からの冬の季節となった。枯れた景色を心配したが、そんな心配はご無用。冬枯れさえも美しい。
温泉街だけではなく、雪化粧の石筵、まっすぐに伸びる道路とゆったりした田園風景の伊豆島など、同じ町の中でも地域ごとの表情があり、それぞれに「綺麗」という月並みな表現が当てはまる。都市近郊でこれだけの美しさに出逢えることに、私達の住む県の懐の深さを再認識させられた。

●取材:2007年12月~2008年2月 「郡青ひなた」第3号(2008年2月28日発行)
●写真:2007年12月~2009年
●文:木村裕輔
●写真:木村裕輔、秋濱あいり
●挿絵:秋濱あいり 
●取材、校正ご協力:郡山市立熱海公民館(TEL 024-984-2679)、佐藤兵一さん

歴史的記述についての考え方はこちら

 

石筵(いしむしろ)・母成(ぼなり)峠

銚子ヶ滝

雪と手付かずの自然とが織り成す、芸術的な自然美

熱海町の中で最も早く冬が訪れる場所と言えば、石筵から母成峠にかけての地域だ。熱海町中心部から北上する県道24号中の沢熱海線は「母成グリーンライン」と呼ばれ、もともとは有料道路であった。沿線は四季折々の自然に囲まれており、冬は雪の白が幻想的な美しさを作り出す。

 

左:銚子ヶ滝。駐車場から徒歩30分。
冬期は雪で非常に滑りやすく要注意。


石筵ふれあい牧場 石筵ふれあい牧場 馬
石筵ふれあい牧場(左右)。詳しくは、下記へ。

山の麓の石筵集落から散策を始めよう。石筵集落は、川の流れを利用した水路のある家並み。この地域の特色である牛舎も姿を見せ始める。
峠に差し掛かる頃になると次第に牧草地が広がり始め、晴れていれば牛の姿も見ることができる。
冬期は閉鎖されているが、石筵ふれあい牧場では動物と直接触れ合うことも可能だ。

石筵牧草地 牧草地
石筵の牧草地(左右)

次第に山深くなるにつれ、自然の深さに圧倒されていく。名瀑の銚子ヶ滝は雄大でありながら、雪の中では繊細ささえ感じられる。付近には牧草地にしておくにはもったいないほどの、木々と岩がつくり出す自然美が見られた。

ブナの原生林 隠れ岩
ブナの原生林(左)、隠れ岩(右)

クライマックスは猪苗代町に入る直前のブナの原生林。沢沿いに佇む木々を見ていると、大自然の一部になったような錯覚を抱く。ここはどの季節にもお薦めの場所。なお、道路を挟んで向かい側には、源義家が隠れたという「隠れ岩」もあり、併せて散策したい。

石筵ふれあい牧場
郡山市熱海町石筵字萩岡2-2
TEL 024-984-1000
営業:例年4月中旬~11月初旬 9:30~16:30
ホームページはこちら

※銚子ヶ滝、ブナの原生林にはトレッキングシューズか長靴で。冬期には細心の注意が必要です。

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高玉(たかたま)

住吉観音

自然の中に散在する、数々の史跡

熱海は中通りと会津を結ぶ街道沿いの町であったことから、歴史的なスポットが数多く点在している。その中でも高玉は、山の麓に位置し景色もよく、比較的近い場所に史跡が集まっているため、ゆっくりと歩いて回るのに最適な地域だ。

左:住吉観音堂

 

高玉城址

熱海町中心部から、石筵方面へ県道24号中の沢熱海線を北上する。
高速道路をくぐる手前、田園地帯に見えてくるのが高玉城址である。この場所は旧二本松藩の領主である畠山氏の分家である高玉氏の城であったが、伊達政宗軍によって落城させられた。1589年のことだ。
城主であった高玉太郎左衛門は畠山氏が政宗との戦いに敗れた後も与しない豪勇だったが、勇戦虚しく敗れ去った。現在は県道沿いに碑が立てられており、地形から往時の姿を想像することができる。

右:高玉城址

 

高司神社

また、すぐその向かいには高司神社がある。ここは城の鬼門除として築かれた、由緒ある鎮守のための神社である。
さらに訪れておきたいのは、高速道路を越した先の崖にある住吉観音堂だ。御本尊は十一面観世音大菩薩立像。川沿いに参道があり、高いところにあるがゆえ景色も美しい。岩を這うように植えられた松の木々がつくる景観は、引き込まれそうな美しさがあり、歴史と共に一見の価値がある。

左:高司神社

 

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磐梯熱海駅周辺

五百川 磐梯熱海

貴重な自然に恵まれた、
川と山を臨む情緒溢れる温泉街

左:温泉街での五百川の流れ

 

磐梯熱海駅前足湯

中心部は、観光客を迎える温泉街でありながら、落ち着いた雰囲気を保ち、自然と見事に調和している。山と川に囲まれた自然と、ここを愛する人々こそが、町の表情をつくってきたのかもしれない。
温泉散策はまず駅前の足湯から始めよう。冬のかじかむ時期には実にありがたい。今ではすっかり市民憩いの場として定着し、取材日も地元の方々が温まりながら話に花を咲かせていた。
駅構内には観光案内所も併設されているので、足湯で温まってから、お気に入りの温泉旅館を探そう。

右:磐梯熱海駅前足湯

 

ケヤキの森

温泉と共に駅付近で是非回っておきたいのは、五百川沿いにあるケヤキの森だ。山一面のケヤキの木々。今ではこれだけのケヤキの群生を見られるところも少なくなってしまった。葉を落とした冬でも、空に伸びる枝の美しさには見惚れることだろう。軽装で気軽に行くことができるのも嬉しい。

左:ケヤキの森

 

丸守発電所

また、熱海の歴史を語る上で欠かせない発電所(後に詳述)の一つ、丸守発電所も見所だ。赤いレンガが特徴的で、春の桜が美しい。

右:丸守発電所

 

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中山宿周辺

中山宿

美しき家並みと発電所
熱海の歴史には欠かせない地域

中通りと会津を結ぶ街道の宿場町として栄えたこの地区には、今も国道49号と平行した道に多くの歴史的情緒を感じられる家並みが残っており、歩いているだけでも楽しい。

左:中山宿

 

三河小田川林道入口

この辺りは雪が多いこともあり、冬の景色が特に美しい。中山宿から北へ向かう三河小田川林道の途中、倉野沢付近で水墨画のような景色に出逢った。(冬期通行不可、未舗装)

右:三河小田川林道入口。(今回は通行していないので、路面などの詳しいことは分かりません)

 

竹ノ内発電所 沼上発電所
竹ノ内発電所(左)、沼上発電所(右)

また、是非見ておきたいのが熱海に三箇所ある発電所。郡山への電力供給は、この発電所から始まり、長距離発電の先駆け的存在となった。中山峠にある沼上発電所は、放水の際の迫力に圧倒される。

めがね橋

また、東側の竹ノ内発電所付近には、旧道の遺構だという、めがね橋の一部が残されている。

左:めがね橋

 

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伊豆島・長橋

上伊豆島

のどかな田園風景が広がる、山の麓の静かな集落

熱海町の東部に位置する上伊豆島、下伊豆島、長橋の各地区は、県道29号長沼喜久田(きくた)線沿いに位置し、延々と広がる田園風景と山並みが美しい静かな農村地域だ。

右:上伊豆島付近、県道29号長沼喜久田線

 

鹿島神社 古道
鹿島神社入口(上)と、内部に飾られた絵(下)

この地域で特筆すべきは鹿島神社だろう。ここには、明治期に中山峠を越える道(現在の国道49号)を作るために岩を切り開き道を作った際の様子を描いた絵が保存されており、貴重な文化財となっている。

大穴林道

また、山を縫うように林道が存在し、その中には片平~夏出(なついで)~竹ノ内と至る旧道なのではないかと考えられる道も存在している。

左:大穴林道。長橋から、磐梯熱海駅方面へ抜ける。

 

(※県内の林道は、多くが未舗装の砂利道で、対向が難しい箇所がほとんどです。また、一般道と違い、ロードサービスの範囲として指定されていない箇所も多いので、注意の上、自己責任での通行となります。路面状況や車の大きさなどを考慮し、無理をなさらぬよう、お願いいたします。また、林道では林業車両が最優先です。)

地図

 

楊枝峠特集楊枝峠を歩く

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